先物取引 [読み:さきものとりひき] 英語名[futures trading]
祐作:先輩、先物取引ってなんですか?
兜:ふむ、先物取引とは、「ある商品」を、「将来の一定の期日」に、「今の時点で取り決めた価格」で取引することだな。今の物、ではなく先の物を取引するんだ。簡単にいえば予約取引だ。
祐作:う~ん、それだけじゃ、イメージが湧かないんですが。
兜:そうだなあ。じゃあ、具体例を挙げようか。祐作が結婚するから「50万円のダイヤモンドリング」を買う状況を想像してくれ。
祐作:は、はあ。
兜:君は、来年の始めに彼女と結婚する。半年後の12月に婚約指輪が必要だ。でも、今50万円を持っていない。しかし、指輪は12月に買っておかなければならない。君はどうする?
祐作:手付金を払ってお店に予約を入れて、冬のボーナスで買いますね。
兜:うん、それが常識的な行動だな。このとき店側と売買の値段を50万円と決めておけば、それは先物取引といえる。
祐作:どういうことですか?
兜:普通、ダイヤモンドリングっていうものは、原料のダイヤとかプラチナの価格変動に影響を受けて値段が変わっていくものだよね。しかし、祐作のケースだと、予約しているから予定どおり12月には50万円でリングを手に入れることができる。予約することによって価格変動を回避したわけだ。
祐作:そうですね。
兜:つまり、(今より)先の物を取引することよって、価格変動リスクを回避することが本来の先物取引なんだよ。「先物取引」って呼ぶからイメージが漠然としてるけど、「先の物取引」もしくは英語の「futures trading」と呼べば、理解しやすいかもしれない。
祐作:「価格変動リスクを回避することが本来の先物取引」というのは、どういうことでしょうか?
兜:先物取引は、ヨーロッパで生まれアメリカで育ったといわれている。アメリカでは小麦・トウモロコシ、ヨーロッパでは胡椒、日本では米といったようにその歴史はすべて穀物から始まった。それは穀物が天候や産地などにより価格変動の激しい商品だったからだ。それらを先物市場であらかじめ受け渡しの約束をすることで生産者は価格変動のリスクを回避し、消費者は安定した供給を得てきたわけだ。
祐作:なるほど。しかし、僕は先物取引というと、リスク回避のものというよりは、投機的なイメージの方が強いんですが。
兜:それは、先物取引が投機にも使えるからだ。さっきのダイヤモンドリングの例で説明しよう。君は12月に50万円でリングを買う約束を店側と交わしたね。
祐作:そうですね。
兜:そのリングの市場価格が12月に60万円になっていたら、君はどう思う?
祐作:60万円のものが50万円で買えるんだからラッキーですね。
兜:そう、これは先物取引で得をしたケースといえる。
祐作:あ、なるほど。
兜:では、逆にリングの市場価格が12月に40万円になっていたら、どう?
祐作:10万円損したことになりますね。
兜:そうだな。まあ、こんな具合に先物取引は投機にも使える。結婚指輪は買ってすぐに転売するわけにはいかないけど、例えばこれが金(ゴールド)だったら先物取引の一種である「商品先物取引」というやつになるわけだ。
祐作:なるほど。
兜:では、ここからは、先物取引の特徴を挙げていこうか。先物取引の特徴は下記のようになっている。
- 証拠金制度を導入している
- 取引に限月(期限)がある
- 差金決済中心である
- 取引所取引である
祐作:では、まず証拠金制度について教えてもらえますか?
兜:証拠金制度は、取引所に一定の証拠金を差し入れるだけで売買を行えるという制度のことだ。先物取引の履行の安全性を図るために導入されている。証拠金は、先物の金額より少ないお金でいい。少ない資金で大きな取引が行えるというわけだ。これを、レバレッジ(てこの原理)効果と呼ぶ。
祐作:取引に限月があるっていうのは、どういうことでしょうか?
兜:先物は、限月(期限日)までに必ず反対売買をしなけらばならないんだ。現物取引の株式投資と違い、いつまでも建て玉を持ち続ける事は、出来ない。
祐作:差金決済について教えてもらえますか?
兜:先物取引は、取引最終日までに、「転売・買戻し」と呼ばれる反対売買を行い、差金の授受によって決済をする。商品を受け渡す代わりに、反対取引をして生じる損益だけを受け渡すんだ。これを差金決済という。
祐作:なるほど。
兜:買建て(先物を買う予約)をした場合、限月までに売ることで決済しなければならないし、売建て(先物を売る予約)をした場合、限月までに買うことで決済しなければならない。言い忘れてたけど、先物は株の信用取引のように、売りから入ることもできるから覚えておいてくれ。
祐作:はい、わかりました。では、最後に「取引所取引」とはなにか教えてもらえますか?
兜:取引所で行われる取引のことを取引所取引というんだ。取引所取引の特徴は、限月が来るまで、いつでも反対売買を行えることにある。取引所取引では、取引の注文を一定の場所に集めるため、取引が成立しやすくなっていて、市場の流動性が確保されているんだ。
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