- 循環取引 [読み:じゅんかんとりひき]
- [同義語:架空循環取引、ぐるぐる回し]
- [類義語:架空取引]
▼循環取引という言葉の意味
循環取引・・・架空取引の一種。商品を実際には動かさずに伝票上だけで売買し、複数の企業間で転売していく取引のこと。最終的に商品は最初の企業に戻ってくる形になる。
例えば、A社→B→C→Dと架空の物を売っていく。最後のD社は、A社に売る。そして、くるっと1周回って、また別のものを、A→B→C→D→A社…と売っていく。架空の商品、売り上げがぐるぐる循環するので「循環取引」と呼ばれるようになった。
▼循環取引の目的 (循環取引のメリット)
・循環取引のリーダー企業にとってのメリット
- 売上高の水増しが可能
- 売上高の水増しにより資金繰りをやりやすくする
- 循環取引をすると、やり方によっては短期の資金調達が可能
1. 複数の会社が結託すれば、商品を動かさなくても伝票さえ帳尻を合わせておけば売上高の水増しが可能。
2. 売上高の数値が大きいと株式市場からの評価が高くなる。株式市場での評価が高まると、増資などによる資金調達が容易になる。また、銀行や取引先に高い売上の数字を報告して、融資や取引の継続を求めやすくなるメリットもある。
(※特に新興市場の企業などは、利益が伸びていなくても、売上高が伸びていれば、それで評価される傾向がある。)
3. 「A→B→C→D→A社」という流れを例にとってみよう。A社を循環取引のリーダーと考えると、AはDから商品を仕入れBに転売することになる。
AはBから商品代金を早めに回収しておけば、B→C→Dと商品が動いている間、その資金を使えることになる。商品が返ってくるまでのタイムラグを利用して、短期的な資金を確保するというテクニック。
・循環取引参加企業にとってのメリット
- 循環取引に参加することでリーダー企業から取引手数料(マージン)をもらえる。
「循環取引」が行われることで中間に位置する各会社間には多少のマージンが発生するが、循環取引を主導する会社がそのマージンを最終的に負担するのが一般的なパターンである。
▼循環取引のリーダー企業にとってのデメリット
- 支払い手数料の発生
- 上場企業の場合、上場廃止のリスクがある
- 上場企業の場合、逮捕・懲役のリスクがある
1.循環取引を主導する企業は、参加企業に取引額の数%の手数料を支払うため、繰り返しすぎると次第に行き詰まる。
2.実体を伴わないため、通常は不正とされる。金額があまりに大きく悪質であれば、粉飾決算と見なされ上場廃止の可能性が出てくる。
3.上場企業の法人は、公正な決算を発表する義務がある。しかし、循環取引がいきすぎると不正の決算書しか作れない。
不正な決算書の発表は投資家を欺くことになるため、不正が発覚すると金融商品取引法の違反容疑で循環取引の責任者は逮捕される可能性がある。 参考記事↓
▼なぜ複数の会社で商品を回すのか?
二者間の取引では税務署や監査法人に、ばれやすい。よって複数の企業間で取引をし、実態をわかりにくくさせる。
▼過去に循環取引を行っていた企業
- メディアリンクス – 上場廃止・倒産
- ライブドア – 上場廃止 (ライブドアのポータルサイト事業は現在はLINE株式会社に引き継がれている)
- 旧ライブドアマーケティング – 上場廃止
- アイエックスアイ(IXI) – 上場廃止・倒産
- ニイウス コー – 上場廃止・倒産
- 加ト吉 (現テーブルマーク社) – 循環取引の事件をきっかけに、JTの完全子会社になった。その際に上場廃止。
- メルシャン – 循環取引の事件をきっかけに、キリンホールディングスの完全子会社になった。その際に上場廃止。
備考
なお、循環取引に使われる商品は何でもよい。IT業界では、実際には役に立たないソフトウェアなどが循環取引用の商品としてよく使われる。そして、循環取引に使う商品は、出荷されず一つの倉庫に留まっていることが多い。商品は移動せずに、伝票だけがぐるぐる回ることになる※
※伝票がグルグル回るので、2ちゃんねるなどネット掲示板では、循環取引のことを「ぐるぐる取引」と呼ぶことが多い。また、水産業界では伝統的に「ぐるぐる回し」、「回し回し」、「魚転がし」とも呼ばれている。