ソフトバンクモバイルの予想外割は携帯電話業界の株価にどう影響するか?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0

10月23日にソフトバンクモバイルの孫正義代表執行役社長兼CEOが「通話料0円、メール料0円」を呼び声に新料金プラン「予想外割+ゴールドプラン」を発表しました。実際は0円になることはまずありえないのですが、孫社長のプロモーションのうまさのせいで、ソフトバンクモバイルは移動通信業界の台風の目になっています。

今日は、ソフトバンクモバイル(略称SBM)の新料金プランが携帯電話会社の株価にどのように影響を与えるか考えてみたいと思います。

▼目次

(1)価格競争懸念は携帯電話3社の株価へマイナスの影響

(2)ソフトバンクのARPU(通信事業における、加入者一人あたりの月間売上高)は下がらない。むしろ上がる。

(3)ナンバーポータビリティー開始によるソフトバンクのシェア低下懸念は後退。au優勢の予想は覆るか。

(4)ソフトバンクの新料金発表は短期的に見て株価にプラス。

(5)今までどおり電話が繋がるのであれば、長期的にみてソフトバンク優勢か

(1)価格競争・・・ソフトバンクの新料金発表は価格競争の口火を切ることになるかもしれません。価格競争勃発懸念から10月24日のソフトバンクNTTドコモKDDIの株価は下がりました。ドコモ、KDDIが追随の値下げについては静観するかまえをみせているため、思ったより株価は落ち着いています。しかし、ドコモ、KDDIが料金値下げの発表を行うことがあれば、また株価が下がるでしょう。

(2)ソフトバンクのARPU・・・ARPUという通信業界用語をご存知でしょうか? ARPUとは携帯電話・PHS事業者の1契約あたりの月間売上高のことです。読み方は「アープ、アルプ、エーアルピーユー」です。どれでもオッケーです。

ソフトバンクの今年度第1四半期のARPUは5590円でした。ARPUはソフトバンクの新料金プランでは、おそらく6000円以上になります。

新料金プラン契約者のARPUが、旧料金プラン契約者のARPUよりも上がることは、ソフトバンクの経営にとってプラスです。

「21時~24時の無料通話は200分まで」といった制約が色々とあるため、ARUPは今までより高くなるはずなのですが、一見、安く思える新料金プランに仕立て上げているところに孫社長のパフォーマンスのうまさを感じます。

(3)ナンバーポータビリティーでソフトバンクが優勢・・・ソフトバンクの新料金プランが発表される前までは、大方のメディアも私も「ソフトバンク劣勢、au優勢」と予想していました。しかし、ふたを開けてみるとソフトバンク優勢になっています。以下、ITmediaからの抜粋です。

開始直後の番号ポータビリティ制度利用意向は「分からない」が増加──マクロミル
キャリア変更を希望する人に、変更希望先をきいたところ、「ソフトバンク」が前回の19%と比較して、25ポイント上昇し、最多の44%となった。これに対して、前回の調査ではキャリア変更先希望のトップだった「au」が52%から31%に、「NTTドコモ」が19%から9%に減少している。

以下、ソフトバンクモバイルのウェブサイトからの抜粋です。

本日の各種申し込み受付時間の繰上げについて 2006年10月28日
誠に申し訳ございませんが、新料金プラン好評につき、多くのお客さまの申し込みが殺到したため、弊社登録センターでのMNPを含む全登録業務を停止させて頂いております。お客様にご迷惑をお掛けしておりますことを、深くお詫び申し上げます。
明日は全登録業務を通常通り行いますので、何卒ご了承を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。

番号持ち運び制度が開始されると、ソフトバンクは劣勢と見られていたわけですが、少なくとも短期的には加入者が増えていると思われます。

(4)ソフトバンクの新料金発表は短期的に見て株価にプラス。・・・上記(2)、(3)の理由により新料金プランは「短期的」にみてソフトバンクの株価にプラスでしょう。しかし、長期的に見るとリスクがあります。

(5)電話がこの先もきちんと繋がればソフトバンクが優勢・・・ソフトバンクの新料金プランに関するリスクですが、長期的にみると電話が繋がりにくくなるかもしれません。これは携帯電話の技術的な話しになります。

携帯電話は一つの基地局(いわゆるアンテナ)で半径数km以内のユーザーをカバーしています。km単位という広い範囲でユーザーをカバーしているため、一つの基地局にユーザーが集中しやすいのです。ユーザーの通話が集中しすぎると基地局がうまく働かなくなり、電話が繋がならなくなることもあります。

PHS事業を行っているウィルコムは2005年から音声定額プランを導入していますが、これには技術的な裏づけがあります。PHSは一つの基地局で半径数十m~数百mのユーザーをカバーします。そのため、ユーザーの集中が起こりにくいわけです。トラフィック(通信量)の分散ができているわけですね。

ソフトバンクモバイルの定額プランについては、ウィルコムのような技術的な裏づけがありません。孫社長は「うちは第3世代携帯の加入者が少ないからいけるだろう」と言っていますが、加入者が増えたときに繋がらない現象(いわゆる輻輳)が起きるかもしれません。また、輻輳が起きれば、「予想外割+ゴールドプラン」の新規加入を打ち切らないといけないかもしれないわけです。

以上、(1)~(5)を踏まえると、今後の移動通信業界の動きは下記の三パターンのようになるのではないでしょうか。

1、ドコモとKDDIがソフトバンクの値下げに追随した場合・・・3社とも株価は値下がり。

2、ドコモとKDDIが値下げをせずに、ソフトバンクで輻輳が起こらない場合・・・ソフトバンク加入者増でソフトバンクの株価が上昇。

3、ドコモとKDDIが値下げをせずに、ソフトバンクで輻輳が起こった場合・・・ソフトバンクの株価が下落

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする